流産・死産の悲しみを公の場に出すこと:「Grief Unseen」より③

流産・死産・新生児死・妊娠中絶等の、妊娠ロスの経験は、通常大っぴらに語られることはなく、「秘密」として扱われます。ひっそりと、後ろ暗いことのように・・・。

そのため、妊娠を失う悲嘆は、まるでこの世に存在していないかのようになっています。
自分が当事者になるまで、知ることがないのです。

アメリカのアートセラピスト、ローラ・セフィルは、この「秘密」をアートによって公の場に出しました。

そのアート・プロジェクト「シークレット・クラブ」について、彼女の著書「Grief Unseen」からご紹介します。
Grief Unseen」「Grief Unseen Healing Pregnancy Loss through the Art Laura Seftel, 2006

 

◆◆ 妊娠ロスがテーマのアート作品展 ◆◆

 

セフィルさんは、妊娠中絶と流産を経験しています。
その苦しい経験のあと、アート制作によって次第に心が回復していったのです。

 

そして、自分の作品の中に妊娠ロスのイメージを表出したアーティストが、自分の他にもいるのではないかと考えました。

彼女は妊娠ロスをテーマにした展覧会を企画し、9名のアーティストの参加を得て「シークレット・クラブ」プロジェクトがスタートしました。

 

◆◆ 分裂、痛み、そして対話 ◆◆

 

けれど、これまでタブーとされていたことを公に出すその準備期間には、仲間内でも多くの痛みと分裂があったと言います。

子どもがいる人と、今も不妊に悩んでいる人。
何十年も前の喪失経験である人と、つい最近の喪失である人。

また、秘密中の秘密であった私的なことを公然と展示して、自分の気持ちは果たして耐えられるのだろうかという不安もありました。

しかし、開催された展覧会は大きくマスコミに取り上げられ、反響を呼びました。

 

訪れた人は、会場に置かれたノートに個人的な書き込みを驚くほどたくさん残したそうです。
これまで封印してきた思い、自分だけだと思っていた悲しみを、やっと表出できた人が大勢いたのでしょうね。

 

「シークレット・クラブ」展覧会は回を重ね、国際的なものとなっていきます。

参加アーティストのほとんどは当事者である女性ですが、中には男性の参加や、喪失の当事者ではない人(親戚や医療関係者など)もいるということです。

 

◆◆ なぜ妊娠ロスをアートで見せるのか ◆◆

 

多くの参加者は、「作品をベッドの下や地下室から出してきた」と言います。
つまり、アートに表出せずにはいられなかった、けれどそれを人に見せることはできなくて、しまい込んでいたのです。

セフィルさんは、これまで語られることのなかった妊娠ロスの経験を、アートによって公にすることの意味を、このように言います。

流産の経験は、何よりも身体的なものです。
アートは、言葉では表現するのが難しいことを表現するのを可能にしてくれるのです。
(「Grief Unseen 」p.120からの意訳)

 

◆◆「シークレット・クラブ」の現在 ◆◆

 

「シークレット・クラブ」プロジェクトの立ち上げは2000年のことですから、もう20年以上前なんですね。

現在の状況を調べてみたら、フェイスブックに「シークレット・クラブ」のグループがあり、作品や関連書籍、イベント等の紹介がされていました。
「シークレット・クラブ」フェイスブック

日本での関連イベント等が実施されたことがあるのか等、もうすこし調べてみたいと思います。

 

◆◆ まとめ ◆◆

今回は、妊娠ロスに関するアート・プロジェクト「シークレット・クラブ」についてご紹介しました。

多くのアーティストが表出せずにはいられなかった心の声・・・。そして、作品を通じて生まれてきた多くの対話。貴重なプロジェクトだと感じました。

著作権の関係上、作品画像を載せることができなかったので、伝わりにくかったかもしれませんが・・・(記事で使用した画像はイメージで、「シークレット・クラブ」の作品とは無関係です)

皆さんはどう思われたでしょうか。

また次回も、「Grief Unseen」からご紹介を続けていきますね。

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