真実の美しさは、一瞬の中に輝くもの

「おばあちゃんがいうの。人生は、ほんの一瞬だけ完ぺきな姿をしているものでいっぱいだって。そして、すぐなくなっちゃうの。手のひらで雪をつかまえるのと同じだって。」

「わたしさがしのかくれんぼ」p.143

珠玉の言葉がちりばめられた、素敵な本に出会いました。
今回の記事では、人生についてしみじみ考えさせてくれる言葉を、この本の中からご紹介していきたいと思います。

 

◆◆ わたしさがしのかくれんぼ ◆◆


本のタイトルは「わたしさがしのかくれんぼ」。アメリカの児童文学です。

わたしさがしのかくれんぼ
P.マクラクラン/作  若林千鶴/訳  中村悦子/絵  文研出版 1991年


主人公の女の子、キャシーは、自分にも、家族にも、住んでいる家や地域にも、うんざりしています。
キャシーの年齢ははっきり書かれていませんが、おそらく12~13歳くらいでしょう。自分の中にも家族の中にも欠点や腹立たしいところが目に付き始め、イライラしたり落ち込んだりしがちな年頃ですよね。

この本は、不平タラタラのキャシーが、さまざまな人との関わりの中で、ものごとを新しい目で見るようになっていく、小さな成長物語です。

 

おそらく、主人公と同年齢の子どもたちを読者として想定している物語だとは思いますが、大人が読んでも、いや、大人だからこそ、しみじみと心に入って来るところがたくさんあります。

 

よかったよ~!とお伝えしたいところはたくさんあるのですが、
この記事では、何らかの喪失を経験した人たちの言葉を拾い上げてみたいと思います。

 

◆◆ 心に繭を作ること ◆◆

シングルマザーのコラリンダは、人前では元気を装い、気丈に振る舞っていました。
でも、ある出会いをきっかけに、次第に肩の力を抜いて過ごせるようになっていきます。

その過程を、知り合った作家ジェームズは、「脱皮」と呼びました。

「・・・子どものころは簡単に変わっていける。ところが大きくなるにつれて、前の状態から逃げ出すのが、少しずつむずかしくなってくるんだ。そこでときには、しばらくなんとなく過ごせるように、自分のまわりに繭を作るんだ。」  p.124

 

思い当たることがある、と言う人が多いのではないでしょうか。
自分のまわりを硬いもので防御し、閉じこもることで、どうにか生きていける・・・そんな時がありますよね。

今まさに繭の中だ という方も、いらっしゃるかもしれません。

 

大きな悲しみのときや、ものごとがうまく進んでいかないときは、変化が必要なときなのでしょう。
でも変わることは、怖いものです。

そんなときは無理に出なくていいんだと思います。
繭や殻を破って脱皮するのには、ふさわしい時期があります。外に出るべきときがきたら、その変化は自然に起こるはず・・・。
そんなことを思いながら読みました。

 

◆◆ 雪をつかまえる ◆◆

「完ぺきなんてものはないんだよ。キャシー、完ぺきな一瞬があるだけだよ、たぶんね。わたしたちみんなにも、そういう瞬間があるよ。だけど、残念ながら、ずっと続きはしないのさ。」  p.137

これは、キャシーのおばあちゃんの言葉です。

 

続けて、おばあちゃんは、雪の日の思い出を語ります。
キャシーとおじいちゃんは、外を走り回って、手袋をした手で雪をつかまえようとしたのです。でも、雪は、手のひらの上ですぐに消えていきました。

「キャシーは、雪がずっと溶けないままで、いてほしがっただろう。
・・・・おじいちゃんも同じことを望んでた。・・・あの人は、ものごとが完ぺきですばらしいのは、雪のようにね、ほんの一瞬だけなんだというのが、絶対にわからない人だったんだよ。」  p.138

人生には、永遠に変わらない完璧なものなんてない。

残念なことではありますが、・・・でも、とても大切な、心にとめておきたい真実なのではないでしょうか。

 

キャシーのおばあちゃんは、ものごとが移り変わることの美しさを味わうことのできる人。
はかないからこそ美しい、思い通りにはならないからこそ愛おしい・・・それを受け容れて生きています。

私たちの人生の、思い通りにならないことへの悲しみや怒りに目を向けるのではなく、
今この瞬間に立ち現れる素晴らしいものにこそ目を留めたい。そんなふうに思いました。

 

今、もしも繭に閉じこもっているような心で過ごしているとしても、
手のひらに乗った雪のようにささやかな何かを慈しんでいく・・・そんな今日になりますようにと願います。

 

◆◆ 「わたしさがしのかくれんぼ」お勧めです ◆◆

さて、「わたしさがしのかくれんぼ」から、心に残った言葉を抜き出してみました。
きっとお読みになれば、他にも大事にしたい言葉がいくつも見つかると思います。ぜひ読んでみてください。

 

ただ、この本はすでに絶版のようです。私は図書館の児童書コーナーで借りて読んで、気に入ったので購入したいと思ったんですけど、アマゾン等でも扱いがなく・・・残念だなあと思っています。

でも、図書館には置いているのではないかと思いますので、探してみてくださいね。

 

 

関連記事

  1. 激しい心の痛みが「思い出」に変貌するときまで

  2. 赤ちゃんと一緒に私の心も死んだ・・・「ゲド戦記」から考える

  3. 流産は、鬱病などの発症リスクを高めてしまう…

  4. 流産・死産が、自分の身に起こるなんて思わないよね・・・

  5. 野原にある誰も座っていない椅子

    流産・死産をしても、その後の人生を楽しんでいい

  6. 流産・死産した赤ちゃんに、美しい世界を見せてあげよう

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。