死別の悲しみ。
当HPは、流産・死産・新生児死を経験した方に向けてメッセージを送るものですが、
これらの周産期喪失に限らず、誰でも生きていくうえで、大切な人との死別は、避けられません。
人の死亡率は100%なのですから・・・
今回は、大切な家族を失った少女の心の軌跡を描いた本をご紹介します。
テーマがテーマだけに、もちろん明るくハッピーなお話ではありませんが、
しみじみと暖かい読後感の残る本です。
「ホイッパーウィル川の伝説」
キャシー・アッペルト アリスン・マギー 共著
あすなろ書房
主人公は11歳の少女、ジュールズ。
アメリカ・バーモント州の、深い森の傍に、ひとつ年上の姉と父親との3人で暮らしています。
ジュールズは、石を拾ったり採掘したりするのが大好きな「石ガール」。
彼女は、石コレクションの中からいくつかを「願い石」と名付けて取り分けています。
「願い石」には、願い事を書いて、森の中の川に投げるのです。
その川は「危険だから近寄ってはいけない」と禁じられているのですが、子どもたちにとっては特別なスピリチュアル・スポットなわけです。
ある朝、姉は、願い石を持って、森に向かいます。
そして、彼女はそのまま、戻ることはありませんでした・・・・
あのとき、もっと強く引き止めていればと、
ジュールズは自分を責め、心を閉ざすのです。
大切な家族を突然失ったジュールズの、心の動きが丁寧に描かれるところは、共感できすぎて、読むのが辛い部分です。
痛み、無気力、罪悪感、空虚さ。
重要なことを言い出せないことや、突然暴発する怒りの感情・・・
ジュールズが苦悩しているそのとき、森ではキツネの子が生を受けます。
「ケネン」と呼ばれる、特別な魂を持った神秘的なキツネは、
いつしかジュールズの心の旅を導く存在になっていくのです。
ジュールズは徐々に「日常生活に復帰」していきますが、
その悲しみは消えることはありません。
ジュールズも、父親も、悲しみを心に抱いたままで、故人との新しい絆 を結び直していきます。
家族や親友、自然などに囲まれて、少し顔を上げ、
新たな歩みを始めていくのです。
これはハッピーエンド、ではないんでしょうけど、といって、バッドエンドでもない。
この物語は、安直な癒しを語ってはいません。
回復とか、立ち直るとか、乗り越えるとか、そんなものじゃない。
悲しみと共に生きていく、その姿が暖かく優しく心に残ります。
悲しみは、消えない。
あなたも、亡くした大切な赤ちゃんのことを、忘れたり、乗り越えて前進したりしなくていいんです。
あの子はかたちをかえて生き続ける。
いまここにいないことの悲しさ、寂しさを感じながらも、
いのちの営みは続いていく。
そんなことを想いながら、しみじみ味わった本でした。
ぜひ、読んでみてくださいね。
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